前回の記事のとおり可能な限り部品を外してパーツを磨き、オイルを新しくして組み立てたミシンはタイミング等がすべて狂った状態です。このままでは縫えませんので各部分を調整していきます。

組み立て
メンテナンス直後はタイミングが合っていない

実は弊社にはミシン屋さんから分けていただいたDY-340用のマニュアルが1冊あるのですが、これをベースにグローブ縫い用に独自の調整を施していきます。

大まかな方針としては、ミシンとして正しい動きをするようにだいたいの位置を見つけて調整し、その後微調整を繰り返して理想的なバランスに戻していく、という作業をします。

1か所ずつ正しい位置やタイミングに合わせる、というよりは全体の様子を見ながら各部分を詰めていくイメージです。

まずは大雑把にミシンらしく動作するように調整します。

ペダルを踏まず、手でプーリー(はずみ車)を廻していきます。通常、モーターや足踏みの動力がベルトを伝ってミシン本体に力がかかるのですが、このプーリーを回転させることでミシンが動き始めます。この時、かならず手前向きに廻すこと。こちら方向が正常な方向で、逆回転はトラブルの原因になりやすいため注意です。

すると、がちゃがちゃと音を立てながらも針棒が上下すると思います。針棒とプーリーは直結されていることが多く、タイミングは変えられないのでこの動きを基準にほかのタイミングを合わせていきます。針が一番深く刺さるポイントを下死点と呼ぶのですが、この時の針の深さを調整します。

横から見た時に、針棒を保持している部品が見えると思います。そのマイナスねじを緩めると針棒が自由に上下・回転し始めます。下死点のとき、この部品も一番下に降りていると思いますが、そのときに針が釜の中にちょっと入ってくるぐらい(針の糸穴が横から半分~7割見えるぐらい)に合わせネジを締め留めていきます。回転方向はほとんど関係ないのですが、針を交換するときに緩めるネジが真右に向くようにすると使い勝手がいいと思います。この時糸道もちょうど正面を向くようになっていると思います。

針のタイミングが決まったら下の送り歯を調整します。送り歯のタイミング合わせはミシンのプーリー付近のあたりにクランクが仕込まれており、そこから裏面に伝わって裏面で動作するようになっています。ミシンを持ち上げ(とても重たいので注意)、裏側をよく観察します。プーリーを手で回すと何らかの動きを見せると思います、送り歯の上下方向と前後方向が別の軸で動いており、うまくタイミングをとると楕円の運動をするようになります。理想は極端な楕円、むしろ長方形のような動きを目指します。タイミングはミシンの上側の後ろ蓋を開けるとクランク部分が見えますので、そこから調整します。(この部分はタイミングをずらすような調整ができないケースが多いです。クランクのタイミングが狂っている場合、覚悟してじっくり時間をかけて調整しなければなりません)

ミシンを横から見た時、送り歯が手前の方から表面に飛び出してきて、そのまま奥側に動き、針板の下に引っ込んでいく動作を繰り返します。この高さ、送り幅を調整します。ほとんどの場合、高さ方向を整えるだけでいい感じになります。
(要加筆)
送り幅を大きくして、針が針板面に当たり、刺さるときに送り歯が引っ込んで、針が針板面から離れるときに送り歯が顔を出すように設計されています。タイミングが整っていれば、送り歯が1~1.5ミリぐらい顔を出すように調整します。送り幅は、ミシン本体の調整ダイアルを絞り切り、0になったときに送り幅が0になるようになっているはずです。(ならない場合、ダイアルを外し芯棒がちゃんと奥に当たっているか・片減りしていないか確認してください。)
そこからダイアルのメモリを上げていくごとに送り幅が増えていればOKです。厳密に何mmに合わせる、というような調整はしない(できない)ケースがほとんどです。

次に、押さえを調整します。針が通っている方の押さえは中押さえと呼びます。この中押さえが布を押さえつけ、針が刺さって抜けるまで押さえ続けます。ですので、針が針板面を通り抜けるタイミングで中押さえが針板面ちょうどになるようにセットします。

蹴り上げ(膝押さえレバー)を膝でぐいぐいと動かし、中押さえが一番下になるところでちょうど針板面に当たる高さになるようにします。蹴り上げの稼働幅は中押さえの高さ稼働幅と直結していますのでできるだけ可動域を持たせておく方がベターです。
(この蹴り上げがミシン後ろから棒を伝って中押さえに繋がっているのですが蹴り上げを持ち上げるときにほんの少しだけ遊びを持たせておくといい塩梅になります)

この段階で、中押さえが布を押さえるときに針が刺さり、針が刺さり始めると送り歯が下がり、針が抜けると送り歯が出てくるようになっていると思います。

送り歯が針板から顔を出すとき、外押さえが針板面になるようにします。外押さえの調整は上下方向と前後方向の2種類軸があり、それぞれ調整します。ここで上下方向の位置を大まかに決めておきます。ミシン上側の後ろ側のネジで位置を調整します。また、ここの稼働幅を調整できるようになっていると思うのですが、それはまたあとでやります。
前後方向は、だいたい送り歯の真上に外押さえが来ていればOKです。これで大まかに外押さえの位置が決まりました。そのままプーリーを廻してみます。
送り歯が針板から下がるころに、外押さえが針板を離れ、空中を歩いて手前に戻ってきます。この動作が楕円の動きをしていればタイミングがとれています。
そのとき、8の字を描いていたり歪な楕円を描いていればタイミングが合っていません。外押さえの動きを見るとき、ミシン後ろ側の押さえレバーを押し上げ、押さえが針板から離れた状態でプーリーを回転させます。空中を、外押さえと中押さえが歩くように動いていれば良い状態なのですが、ここでの状態と押さえが針板面に近づいたときとでは少し状況が変わるのでなんとも難しいところです。ですが、この時点で動きを整えておくとタイミングが合っている状態に近づくのでやっておいたほうが良いです。
外押さえの動きは、上下方向と前後方向の2軸のタイミングで動いています。前後方向のタイミングはプーリー近くのクランクで合わせます。針が針板面から離れるときに送り歯が手前になるようタイミングを合わせます。
上下方向はミシンの真ん中あたりの後ろ側でクランクの位置で調整します。外押さえがきれいな楕円を描くように調整します。外押さえが手前に来た時に上下真ん中ぐらいの高さ、外押さえが前から後ろ方向に進むちょうど真ん中に来た時に一番下になるようにします。何度かやっていると円運動に近づけるコツが掴めますので、じっくり合わせます。

外押さえと中押さえ(と針)、送り歯のタイミングが合えばおおよそミシンらしい動作をするようになってきたと思います。最後はミシンの裏側の釜を調整します。

針が下死点になったときに針穴が半分見えるように調整していますが、釜の位置はまだ曖昧なままだったと思います。針が下死点を過ぎ、上がっていきます。針が4ミリ上がったところで、釜が針の後ろをかすめるようにタイミングを合わせます。釜の剣先と針の裏の隙間は小さすぎると針に当たるし離れすぎるとうまく糸のループが拾えないため目とびしてしまいます。いい塩梅で調整するのですが、0.5mmぐらい離れていればいい加減だと思います。感覚として、思ったより離れているぐらいでちょうど良いことが多いです。また、針が4ミリ上がった時、というのもタイミングの問題なので、針と剣先が出会うタイミングが早い方が良いときと遅い方が良いときもあります。ここの調整は大雑把な調整が終わった後、詰めていきます。

以上で、ミシンが大まかにミシンらしく動作するようになったのではないでしょうか?

いったん、ここまでにしておきます。また後日加筆予定。